とうとうコウちゃんは川から上がってきました。
何も前に進んでいない。 でも、もうしがみつくものがない。
そんな開放感が、コウちゃんにはありました。
ウルフさんともへこは、泥んこになることもいとわずに、コウちゃんを抱きしめました。
「お疲れ様・・・お疲れ様・・・!」
「よくがんばったな! ・・本当によく頑張ったぜ!」
「ボク・・・本当はすごく苦しかった。辛くて辛くて辛くて辛くて・・・どうしようもなかった・・。
全部を回りのせいにして・・・ひどいことを言ってごめん」
コウちゃんの、泥んこに汚れた顔を、きれいな涙がつたいました。
「なんだかボク・・・景色が違って見えるよ・・・。
川にいるときは、全てが憎らしく見えて、全てが汚れて見えていたけれど、
外に出ると、こんなに桜がきれい・・・。不思議だなぁ・・・」
「汚れた水の中で解決策を探しても、汚れた解決策しかみえねぇもんな。
そこから抜け出るのを、『フィルターを外す』とか『ソリューションフォーカスする』とか、色々というけれどよ、要は『既存の価値観を外す』っていう作業をしねぇと、可能性ってなかなか見えてこねぇよな」
「コウちゃんは、自分の力でそこから出たんだね・・。すごいなぁ。
私なんか、ウルフさんに何度も何度も説明してもらっても、全然でられなかった・・」
「いやぁ、ボクだってもへこちゃんが『いい加減にしてよ!』って叫んでくれなきゃ、出られなかったよ」
「ありゃぁ怖かったよな! もへこ、めっちゃめちゃ小じわ出てたもんな!」
「うそぉ~~~!!? やめてくださいよ!」
ウルフさんたちは泥んこになりながらたくさん笑いました。
みんなで仰向けに寝転ぶと、春の風に吹かれた桜の花びらがひらひらと舞い、降り注いできます。
それはまるで、花びらのダンスのようでした。