ウルフさんの『逆境を成功に変える鉄板法則』

「せぇ~~~の!!」

それから1年が経った、桜の日。
100人以上の森の仲間が、掛け声とともに、川に入れてあった炭素繊維のネットを引き上げました。
炭素繊維には汚れを吸着して川を浄化する働きと、浄化微生物を活性化させる働きがあります。
1年間沈めてあった炭素繊維は、しっかりと汚れを吸着して黒い塊になっていました。
それを交換する作業が行われたのです。

「うわぁ~~~、きたなぁ~い!」
子ども連れの動物も沢山います。
1年の間にこの川の浄化プロジェクトは、森全体の計画として進められるようになりました。

炭素繊維を引き上げると、透明な水の底が見え、小魚たちがキラキラと泳いでいるのが見えました。
手伝いに来ていた動物たちから、いっせいに歓声があがります。

「え~、それではこれよりぃ~、開川式を行います・・」
蝶ネクタイのロビンスがカチコチになりながらマイクを握って、司会を務めています。

「ねぇ・・ウルフさん・・。『開川式』で本当によかったんですか? なんか戦いが始まるみたいになっていますよ?」
実行委員席に座っているもへこが、となりに座っているウルフさんにひそひそと言いました。

「いいじゃねぇか・・名前なんてどうだってよぉ・・」
相変わらずネーミングセンスの乏しいウルフさんが、ボヤボヤと呟きました。

「それでは、代表して、コウちゃんのジュスイです!」

ウルフさんともへこが慌てて止めに入りました。
「ち・・違う違う!! バカ! ニュウスイでしょ!」
「おめぇ、ジュスイって意味が違ってくるじゃねぇかよ!!」

「えぇ・? だって、入水って書いてあるから・・・!」
ロビンスはもう一度マイクを持ち直し、
「え~~~・・・というのは、ブラックジョークで、コウちゃんの入水です!」

すると思いっきり助走をつけたコウちゃんが、「ひゃっほ~!」という叫び声を上げて、誰よりも先にキレイな川に飛び込みました。 それを見て、参加者からは大きな温かい拍手が送られました。

「気持ちいいよ~!! みんなもおいでよ!」
コウちゃんの言葉を合図にして、みんなが川に入っていきます。
桜が満開の『おぼろ川』で、その年は初めての大水浴び大会が行われました・・・・。
ウルフさんともへこも、いてもたってもいられなくて、実行委員席から飛び出しました。
「お~い! 混ぜてくれぇ!!」
桜の花びらがヒラヒラと踊る中、水浴び大会はいつまでも続けられました。