ウルフさんの『個人サロンができるまで』

プッチとミケの会議 ④-Ⅴ   ~競合分析 3日目 最終日~

「同類ね・・・」
プッチの家に帰ってきて、ミケが言いました。

「同類って?」
「ウルフさんも、ナナコさんも、答えを課題にしたがる! あ~~~モヤモヤするぅ! はっきり言えばいいのに!」
「ミケちゃん・・・だんだん猫の皮がはがれてきたよ?」
「もともとネコだからいいの!
何よ! りんご箱から溢れたりんごって!!」

「あまったものじゃない? りんご1箱3000円なら、あまったりんごを売れば利益になるし」
「それはわかるけれど、それとサロン運営ってどうやって繋がるのよ・・。 お客様はりんごじゃないし・・」

「なんだろうね・・・」
「そもそも、利益を出すなら、りんごの箱自体を売ればいいじゃない! なんでわざわざ余らせるワケ?」
「『溢れたりんご』っていうところがポイントなんだろうね・・・
ミケちゃんなら、溢れたりんごを買う?」
「値切るわ! だって、溢れてるんだもん。 余ってるっていうことでしょ?
だったら、割引してでも売りたいはずよ!」
「そ・・・そういう考え方もあるよね。
じゃぁ、りんごの箱って、一体なんだろう・・・」
「りんごの箱はりんごの箱よね。 それ以外でもなんでもないんじゃないかしら・・」

「あ~~~~~、わからなくなってきた・・・。困ったなぁ・・・明日にはウルフさんに
『成功するサロンが成功する理由』の答えを出さなきゃいけないのに・・・」

「プッチ、ちょっと整理しましょうよ。 いろんなキーワードが出てきたし。

まず、『整合性』でしょ? それと、『基本』・・・。あとは、灯台」
「りんご箱の整合性・・・? りんごが溢れる整合性・・・溢れたりんごで利益を出す整合性・・・」

「ねぇ、ミケちゃんはさっき『溢れたりんごなら値切る』って言ったけれど、なんで?」
「だって、溢れてるものって、余っているものじゃない?
そうしたらきっと生産者も困ってるから、安くても売りたがるんじゃないかしら」
「でも、農家ってみんな同じだと思うけれど、どこかと契約して買い取ってもらってるんじゃない?
だから、個人売買をするとダメらしいよ?」
「そうなの? じゃぁ、溢れたりんごって、売れないじゃない」
「なかなか手に入らないもの・・・っていうことなのかなぁ・・・」
「プレミア付のりんご ・・・とか?」
「生産者さんのサイン入りのりんごとか(笑)」
「そんなの、よっぽど有名な農家さんじゃなかったら、価値が無いわよ(笑)」
「あ!!」
プッチは、何かを思いついたように言いました。

「ミケちゃん・・・溢れたりんごって、箱入りのりんごより売るのが難しいよね・・」
「そうよね。 値引きでもしない限り売れないんじゃない?」
「そうだけど、違うかも! それでも、価値をつけて高く売れる人もいるんじゃないかなぁ・・・」
「たとえばどんな人?」
「ものすごくこだわりを持っていて、すっごくおいしいりんごを真心こめて作っているような・・・」

「そういえば、・・・昔、『笑うブタ』の話を聴いたことがあるわ。
そこの養豚場では、ブタに本当に真心を込めて接して、家族のように大事にするの。
そうすると、ブタが笑顔になるんだって。
その子は、とっても上質なブタとして、高値で売れるっていうことで、注目を浴びていたわ・・・」

「そんなブタが、市場に出回っている以外で大切に保管されていたら・・・」
「きっと、ものすごく価値が高いわよね」

「さっき思ったんだけれど、『溢れたものを売る』ほうが、生産者の力量が試されるんじゃないかなぁ。
どんな価値を持っているかが、ダイレクトに響いてくるような・・」
「箱入りのりんごは、業者が買い取ってくれるから、売れるのが当たり前。むしろ、誰かが売ってくれる。
けれど、『溢れたりんご』は、自分の力で売らなきゃいけない。
そこにどんな価値があるか、そのとき初めて試される・・・っていうことかしら?」

「そうだと思う。
ウルフさんの話と、ナナコさんの話の整合性が取れてきた気がするんだ。
・・・・灯台が見えてきた・・・」

「プッチ、どんな!?」

「りんごの箱は、基本じゃないかな・・・。
ある程度、売れて当たり前。売れなきゃおかしいって、ナナコさんが言っていた、基本的な姿勢」
「で、溢れたりんごは!?」
「それ以上の、価値だよ。 それ以上の、なんていうか・・・付加価値だと思うんだ。
そうだよ。 溢れたりんごは、オーナーの価値がないと売れない。
つまり、オーナー自身に、基本+αの価値が無きゃ、利益が出せない・・・」

「なるほど・・・。基本はできて当たり前っていうことね・・・。
ウルフさんが怒鳴っていたのは、そこなのね。
『基本的なことができて、その上で自分の価値を高めていかないと、利益は出せない』って・・・
溢れたりんごばかりに目がいっていたら、基本的な売り上げも上がらないし、自分の力量が無い場合は、利益も上がらない・・・」
「明日は、この方向性でまとめてみようか。なんだか、ちょっと見えてきた気がするよ」
「『成功するサロンは、何があるから成功するのか』・・・、まとめてみましょう!」
それから、夜遅くまで二人で話し合いを続けました。 情報の海を照らす灯台が、見えてきたようです。