プッチとミケの会議 ③ ~目標と、目的~
「プッチとの話し合いにも、だいぶ慣れてきたみたい」
日が暮れた頃にプッチの家に戻り、コーヒーをすすっていたミケが、ふぅ~っとため息をつきながら言いました。
「わたし、『なにを話し合うべきか』が、ちょっとずつわかってきた気がするわ」
「ミケちゃんって、本当に吸収力が高いんだね・・・。
僕なんか、なにをどう考えていいやら・・・」
「今の課題は、私たちの目的と目標ね。
プッチは、目標がはっきりしてたよね」
「うん! その点は大丈夫!
僕は、自分のお店を持って、バリバリがんばって、ガンガン稼ぐんだ!」
「頼もしいわ♪ それで、毎月の売り上げはどのくらいが目標なの?」
「そりゃぁ、沢山さ! 目標が高ければ高いほどいいからね」
「ちょ・・・ちょっと待って、プッチ。 目標が高いのはすごくいいんだけれど、私にはまだイメージできないわ。
だいたい、いくらくらいを目指しているのか、教えてもらえないかな」
「え? いくらくらいか・・・?
ん~~~~・・・、それは考えたことなかったなぁ・・・。
でも、売り上げが上がっていれば、赤字になることはないんだから、大丈夫じゃない?」
「・・・そうなのかしら・・・。わたしには経営のことはよくわからないから・・・」
「ミケちゃんは、目的が明確だったよね。人のためにがんばるって。
じゃぁ、ミケちゃんの売上目標はあるの?」
「そ・・・そう言われると困るわね・・・。
わたしは、沢山じゃなくってもいいけれど、二人がちゃんと食べていけるくらいあれば十分かな・・・」
「そんなんじゃ駄目だよ。 僕みたいにちゃんと志を高くもってがんばらなきゃ!
そうじゃないと、バリバリがんばれないぞ!?」
「ん~~~・・・なんか、その、『バリバリがんばる』が、よくわからなくなっているの・・・」
「え? どういうこと?」
「今、話し合わなきゃいけないのは、目的と目標だと思うんだけれど、
それって、もう少し、こう・・・・具体的なような気がするのよ・・」
「ん~~~・・・そうなのかなぁ・・・。
でも、ミケちゃんは前言ってたよ?
『お客様のためにがんばっていれば、売り上げはあとからついてくるんじゃないか』ってさ」
「そうね・・・確かに言ったわ。そして、今でもどこかでそう思っている自分もいるの。
でもそれって、『目的』な気がしてるの。
ウルフさんが言っていた、『目標』のほうをもっと考える必要があると思うわ・・・」
「あ~~~~~、だんだんわからなくなってきた!
『お客様のために、バリバリ一生懸命がんばる』じゃぁ、駄目なのかなぁ・・・」
「そういえばわたしたち、『目標』について、しっかり話し合ったことってなかったね」
「そうかなぁ・・・。何度も『お客様に喜んでもらえるお店にしようね』って、話し合ったけどなぁ・・・」
「プッチ、わたしもちょっと混乱してきているから、一度整理しましょうよ。
まず、サロンを運営する目的と目標って、なんだったっけ・・・」
「確か、目的が、お客様のためのもので、目標が、自分のためのもの・・・かな」
「そうよね。 それで、もう一度最初のほうに戻ってみない? 東京に行くことにしましたっていうのに」
「行く目的と、到着時刻の目標のこと? いまさら!?」
「そう。基本に戻るの。 行く目的と、到着時刻の目標に置き換えてみると、
『とにかく早く着く』っていうのって、ちょっと違うんじゃないかしら・・・」
「ん~~~~、確かに、早く着きすぎても、やることがないしね・・・」
「それもそうだし、あとは、6時間かけて割安なバスでゆっくり行けるところを、
とにかく早く行こうと思うと、不必要に高い乗り物に乗らなくちゃいけなくなるわ・・・」
「そうか。新幹線なら、バスの2~3倍の料金だしね。
サロンに置き換えてみると、『目標の金額によって、がんばり方も変わる』っていうことかなぁ・・・」
「きっとそうだわ。 月々100万円の売り上げを上げるサロンのやり方と、
月々50万円の売り上げを上げるサロンのやりかたって、きっと違うのよね!
かけられる経費も、取るべき集客方法も違ってくるのよ!」
「なるほどね! ただ闇雲にがんばるっていうのも、意外と落とし穴があるんだね!」
「どうやら、そうみたいね。 もっとも、わたしはプッチのそのポジティブな姿勢を見習う必要はあるけれどね」
ミケがウインクをしながら、いたずらっぽくいいました。
その後、コーヒーのおかわりを注いだミケとプッチは、『目的と目標』について、夜遅くまで話し合いを続けました。