それから数日後、ウルフさんのクロージングセミナーのおかげもあり、もへこのお店には以前よりも新規のお客様が増えました。
電話で問い合わせをしてくださった方をクロージングできる確率が上がったのです。
「よかったじゃねぇか」
いつものように、もへこのお店に遊びに来ているウルフさんが、もへこの淹れたカモミールティーを飲みながら言いました。
「えぇ・・そうなんですが・・」
「ん? どうした。なんか悩み事か?」
「えぇ、新規顧客が増えると、リピートのとり方に困ってしまって・・。
きっと、クロージングと同じ方法でアプローチをすればいいんだろうとは思うんですが、
施術が終わってゆったりしてくださっているお客様に、『どうでしたか?』ってお声をかけると、
なんか、夢見心地から起こしてしまう気がして、気が引けるんです」
「なるほどな、もう一歩進んだ悩みにぶつかったわけだな」
「そうだといいんですけれど・・・」
「ウルフさんが言っていた、『お客様のニーズに寄り添う』って言うことを考えていくと、
きっとその場では『そっと帰して欲しい』っていうのがニーズだと思うんです。
それなのに、営業トークとか次回予約トークをするのに、抵抗があるっていうか・・。
どこかのアンケートで、
『せっかく気持ちよく施術を受けれたのに、担当の方が次回予約トークを切り出す瞬間が嫌だ』って言うのを読んでから、それが怖くなってしまって・・・」
「言いてぇことはわかるぜ。
そして、もへこの考えていることは、間違っているわけじゃねぇと思う」
「ウルフさん。 お客様をリピーターに変える為のいい方法ってないでしょうか?」
「さっき、もへこは、お客さんのニーズは『そっと帰して欲しい』ということだって言ったよな」
「はい」
「なんか他にもう一個、お客さんのニーズって思いあたらねぇか?」
「ん~~~~・・・そうですね・・・・」
「例えばもへこの場合は、アロマセラピーとアロマトリートメントで、お客さんの疲れをほぐすんだろ?
ロビンスのマッサージだって一緒だよな。
それが終わった時、お客さんの中に湧き上がるニーズって、なんだろうな」
「それは・・・『このまま眠っていたい』とかでしょうか」
「そうだな。そういう要素もある。
多分よ、『このままの状態が続いて欲しい』っていうものじゃねぇかなって思うんだ。
エステとかだったらなおさらだよな。
『このままのプルプル感を維持していたい』って思うんじゃねぇかなぁ」
「確かにその通りですね・・」
「じゃぁよ、『お客さんが、もう一度来たくなる時』って、いつだと思う?」
「話の流れ的に考えると・・・『維持できなくなった時』・・・だと思います」
「その通りだ。 お客さんは、自分でその状態を維持できなくなったら、もう一度お店に足を運ぶんだ。
だったら、それのタイミングを教えてあげればいいんじゃねぇかな」
「と・・いいますと?」
「例えば、エステの例で言うとよ・・
『トリートメントはいかがでしたか? すっごくプルプルになりましたよ! あごのラインもすっきり!
今は十分プルプルしていますが、おそらく2週間くらいで目じりの部分が気になってくると思います。
その時には、目じりの、この部分だけ、ちょっと多めに保湿クリームを塗って下さいね。
それでも気になるようでしたら、もう一度来て下さいね』
って言うと、
『勧誘せずにそっと帰して欲しい』
『このままの状態を維持したい』
っていう、お客さんの2つのニーズを同時に満たすリピートクロージングトークになるだろ?」
「ほ・・・本当ですね!
『もう一度来てください』っていう言葉が、なんの抵抗もなく入ってきますね!」
「お客さんは、本当はお店なんか通わずに自分で解決するのが一番いいことをわかってる。
でも、自分で手入れするのには限界があることも、同時に知っている。
だから、お店に来るんだろ?
だったら、その限界を『啓発』してあげれば、自分から『もう一度行く』って言い出すはずだ。
自分の限界を、自分が一番よく知っているはずだからよ」
「すごいですね! 目からうろこです。
なんか、改めて、『お客様のニーズに徹底的に寄り添う』っていうことだけで、
新規獲得も、リピートの獲得もできるんだなぁって思いました・・・」
「そうだな。
専門家の口から、『2週間後にはこうなる』って暗示しておくのもポイントだ。
そういった情報を先にインプットしておけば、お客さんの潜在意識に『2週間後には維持できなくなる』という意識が生まれる。
そうすれば、自分から『お店の人が言っていたのは、こういうことだったのかぁ』と、啓発されるポイントを見つけ出してくれる。
誤解を恐れずに言うなら、クロージングの時限爆弾・・・『クロージング・ボム』だな」
「わかりました! やってみます。
ありがとうございます!!」